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アヌシー国際アニメーション映画祭を始め
世界の映画祭で数多くの観客賞受賞
『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『ブレンダンとケルズの秘密 』で世界が注目するアイルランドのアニメーション・スタジオ、カートゥーン・サルーン。設立メンバーのひとり、ノラ・トゥーミー初の単独監督作品『ブレッドウィナー』によって、スタジオは3度目のアカデミー賞ノミネートという快挙を成し遂げた。
ファンタジックな映像が魅力の前2作とは異なる個性を持つ本作。ストーリーをより際立たせ、主人公の目の表情に恐怖や怒り、そして希望を語らせる細やかな演出によって「アニメーションは子供向け」という先入観をトゥーミー監督は打ち破る。
42の国と地域、102の映画祭で上映され、数々の賞を受賞した注目作が満を持してスクリーンデビューする。
家族のために髪を切り“少年”になった勇気ある少女の物語
2001年アメリカ同時多発テロ事件後のアフガニスタン、カブール。11歳のパヴァーナは、お話を作って家族に聞かせるのがとても上手な女の子。しかしある日、父がタリバンに捕まり、パヴァーナたちの暮らしは一変。女性一人での外出が禁じられているため、パヴァーナは髪を切り“少年”になって、一家の稼ぎ手(ブレッドウィナー)として町に出る。パヴァーナが目にした新しい世界とは? 家族たちの運命は…?

原作は、カナダの作家で平和活動家のデボラ・エリスの「生きのびるために」(さ・え・ら書房刊)。17ヶ国語に翻訳され、ピーターパン賞をはじめ数々の文学賞を受賞したベストセラー児童文学だ。パキスタンの難民キャンプで、アフガニスタンの女性や少女に取材を重ね聞き取った話をもとに本原作を書き上げた。
他人を思う優しさを忘れず、どんな困難の中でも生き抜く
力強いパヴァーナは監督自身の物語
自らをストーリーテラーと呼ぶトゥーミー監督は、思春期、自分の居場所を見つけられずに高校を中退。工場で3年間働いた後に、アニメーションという自分を表現する方法を発見した経験がある。境遇は大きく違っても、自分の力で人生を切り開く主人公に、監督自身の姿が重なる。
母親でもある監督は「現実の世界には問題が山積しています。それでも、その問題に向き合い、時には他の人に微笑みかけ、誰かとつながること、問題を深く考え理解しようとすることに未来への希望があります」と語る。
心強い協力者アンジェリーナ・ジョリーの参加
本作に協力を申し出たのは、UNHCRの特使であり、アフガニスタンで少女たちの学校教育を支援するアンジェリーナ・ジョリー。東洋と西洋が交差するシルクロードの「文明の十字路」アフガニスタンの美しさ、困難を生きる人々の心情について監督に助言を行い、サポートした。
ジョリーは「アフガニスタン文化の豊かさ、創造性、強さ、パヴァーナのような小さな女の子を、この映画はきちんと描いてくれると思ったのです。何百万というパヴァーナのような少女たちが、圧制や紛争の下で家族を支えながら暮らしています。この物語は、そうした少女たちの計り知れない努力を忘れないためにあります」と語る。
“現実”と“物語”、ふたつの世界を描くアニメーション
綿密な調査に基づき伝統的な2Dの手描きアニメーションによって再現されるリアルなカブールの町並みと対比させるように、パヴァーナが語る物語の世界は、切り絵アニメーションで、色彩やかに描かれる。2つの異なるスタイルのアニメーションが、物語の力で困難な現実を強く生き抜く、主人公の姿を一層輝かせる。
パヴァーナをはじめ声優の半分をアフガニスタンにルーツを持つ俳優が担当し、音楽にはアフガニスタン国立音楽院の若い学生たちが参加している。
 
11歳のパヴァーナは、アフガニスタンの戦争で荒廃したカブールにある小さなアパートの1つの部屋で、教師だった父、作家の母、姉と幼い弟と暮らしています。タリバンの支配下に生きるパヴァーナは、父が語る物語を聞きながら成長し、市場で人々に手紙を読み書きして生計を立てる父を手伝っています。 ある日、父親がタリバンに逮捕され、パヴァーナの人生は一変します。タリバンは、男性を伴わずに女性が家を出ることを禁じているため、家族はお金を稼ぐことも、食料を買いに行くことさえできません。 一家の稼ぎ手として家族を支えるために、パヴァーナは髪を切り“少年”になります。そして危険をかえりみず、パヴァーナは父を救いだす方法を探そうと決意するのですが…。
 
1971年10月31日、アイルランド・コーク生まれ。
ティーンエイジャーの頃、コーク州ミドルトンの学校を中退。陶器のアンティーク人形の複製を作る仕事を見つけ、物作りの楽しさに気づく。 しかし、生計をたてるために、野菜工場で3年間働き続けた。「夜勤でした。私の仕事は、ベルトコンベヤーの前に座って冷凍野菜や乾燥野菜をチェックして、黒い部分を取り出すことでした。 機械の騒音を遮断するために、耳栓とその上にイヤーマフを付けていたので、話すことも、ラジオを聴くこともできません。 12時間ベルトコンベヤーに目を向ける必要がありました。それは想像力を養う上で、最も驚くべき訓練となりました。 なぜなら、12時間を乗り切るために最初から最後まで、自分自身に話をして聞かせたからです。 大学のストーリーテリングより勉強になりました」と監督は言う。
その後、新たに設立されたダブリンのバリーファーモット大学のアニメーション・コースに進学。1999年大学時代の仲間であるトム・ムーア、ポール・ヤングと共にカートゥーン・サルーンを設立した。2005年『ブレンダンとケルズの秘密』を、トム・ムーアと共同監督しアカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされた。『ブレッドウィナー』は長編単独監督デビュー作。現在は人気絵本「エルマーの冒険」を原作とした長編アニメーションをアマゾンの依頼で制作中。
 
1960年、カナダ・オンタリオ州コクレーン生まれ。
作家、平和活動家として世界中を旅行し、戦争、貧困、病気、差別などによって困難を強いられている子供たちを取材している。1997年、1999年の二度にわたって、パキスタンのアフガニスタン難民キャンプをおとずれ、たくさんの女性や子供たちから聞き取り調査をして書いた、戦乱のアフガニスタンを生きぬく少女の物語「生きのびるために」「さすらいの旅」「希望の学校」(いずれも、さ・え・ら書房刊)は、世界17ヶ国で翻訳出版されている。
本の印税を、Canadian Women for Women in Afghanistan( アフガニスタン女性のためのカナダ女性)、ストリート・キッズ・インターナショナル、IBBY(国際児童図書評議会)のChildren in Crisis Fund(困難にある子供たち基金)、ユニセフに寄付している。
 
ポール・ヤング、トム・ムーア、ノラ・トゥーミーが1999年に、アイルランド、キルケニーに設立した、アニメーション・スタジオ。製作した3本の長編すべてがアカデミー賞にノミネートされた他、「ウーナとババの島」などの人気TVシリーズを製作。『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』に続くトム・ムーア監督のケルト3部作『The Wolfwalkers』を準備中。
 
平和と自由を噛みしめて生きていますか?そうでない人々がどんな思いで生きているのか?
家族を奪われ、生きる権利を奪われた人々。悪になる事で居場所を見出す現状。
戦争はテロリストは誰が生んだの?その中で生きる人々を見て欲しい。
そして、時代が産み落とした善と悪とは?
未来を託す子どもにも必ず見てほしい、これが『現実』だと。
そして平和に溺れないで。
サヘル・ローズ
女優
この映画をどうしても、一言で語ることができない。タリバンを利用してきた大国の姿を思わずにはいられなかったからだ。ただ確実に言えるのは、翻弄されるのは常に、パヴァーナのような市井の人々であり続けていることだ。
安田菜津紀
フォトジャーナリスト
私の父は特攻隊の生き残りだった。晩年、日の丸いっぱいに書かれた寄せ書きを見せてくれ、楽しかった思い出を語ってくれた。悲しい話はしなかった。
今でも、爆撃から逃げ回る世界がある。男と女の価値が違う世界がある。文字の読めない人がいる世界がある。玩具に爆弾を仕掛ける世界がある。何をするにも命がけな世界がある。
それでも明るい未来を作る物語は老若男女、貧富、国籍、言葉、宗教にかかわらずみんな大好きだ。11歳の少女の悪夢が、いつか楽しい記憶にすり変わって、この映画のように美しく永遠に紡がれていきますように。
東えりか
書評家
すべての映画は尊いと思っていますが、時々この世に生まれたことに大いなる意味を持つ映画に出会えることがあり、本作『ブレッドウィナー』がまさにそうでした。圧倒的な理不尽さと恐怖を前に大人たちが無力になる中、11歳の少女パヴァーナの何と勇敢だったことか。パヴァーナが美しい黒髪を切り落としたとき、タイトル『ブレッドウィナー(一家の稼ぎ手)』の意味が重く突き刺さってきました。

小さな体で家族を支える、過酷な環境下に置かれているパヴァーナのような少女が、世界に何百万といる現実。少女達を代表するパヴァーナの人生が、せめて映画の中だけでも希望に満ちた最後を迎えて欲しいと願いながら観ていました。なので映画の最後には涙が流れました。

パヴァーナの勇敢さを支えていたのは、家族を想う気持ちと、「物語の力」でした。物語が人々に与える力の偉大さを思いました。そしてこのパヴァーナの勇気の物語こそが、世界の多くの少女達に勇気を与えるのではないかと思いました。だからどうか一人でも多くの子ども達に、この映画が届きますように――
教来石小織
World Theater Project代表
男の子だったら…。
女の子になれたら…。
自分ではない性に生まれたらと、誰もが一度は考えたことがあるでしょう。
その必要に迫られたことは、あったでしょうか。
幼いパヴァーナは家族のため、美しい髪を自ら切り落とし、兄のものだった服を着て、男の世界がどのようなものかを知る事になります。
初めて客として扱われた時の、高揚したパヴァーナの顔。
妹の髪を切る姉の横顔。
彼を呼びとめる、母の顔。
目を背けたくなる様な現実の中、やられっぱなしではいられないと立ち上がり続ける一人の女の子のお話に、心を揺さぶられました。
丁寧で新鮮な演出に加え、日本の多くのアニメとはまた異なった空気感、絶妙な間と絵の美しさ、ストーリーの運びに魅入ります。
まるでパヴァーナと、一緒に埃っぽい路地に立って、息を潜めているような錯覚に陥りました。 重くて悲しいだけの話ではありません。
ぜひ、パヴァーナという女の子を知ってください。
ユペチカ
漫画『サトコとナダ』作者
センチメンタリズムに流されず、深く心と魂を掴む稀有なアニメーション
エンパイアマガジン
『火垂るの墓』以来の戦争を生きる子供を描いた、美しく胸を打つ作品
メトロ
敬称略・順不同